- もの忘れ外来
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認知症そのものを専門的にみる外来診療として「認知症外来」「もの忘れ外来」などと称する診療を行っている医療機関が増えています(欧米ではMemory Clinicと称する)。これらは医療制度としてはなく、診療所や病院の医師-精神科、神経内科あるいは老年科医-などが自主的に行っているものです。この専門外来の多くは予約制で、問診、理学的診察、CTやMRIなどの画像検査、心理テスト、血液検査、胸部レントゲン撮影、心電図などを組み合わせた診療内容です。この専門外来は、加齢に伴う記憶障害と疾患に伴う記憶障害との判別、早期のアルツハイマー病の診断、認知症の原因疾患の鑑別などを行います。
こうした外来の普及に伴いアルツハイマー病など早期あるいは軽度の認知症の人ご本人も受診する機会が増え、初期治療・早期治療が行われるようになってきました。外来診療の内容は医療機関によってまちまちですが、治療、介護相談、利用できる制度の紹介まで行っているところもあります。
- 問題行動
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認知症の人を介護する際に、「問題行動」という言い方をされることがあります。何度も同じことを聞かれる、「お金がなくなった」と問い詰められる、食べ終わったとたん「食べてない」と食事を要求する、「家に帰る」と言い張るなどの言動を「問題行動」と呼ぶことがあります。確かにこうした言動で介護者は困惑し、介護者にとっては「問題行動」でしょう。しかし認知症の人がなぜ「問題行動」をとるのか、介護者の無理解や不適切な対応、生活環境などがその行動の原因になってはいないだろうかと認知症の人の立場に立っての推測することは「問題行動」とは何かを立場を変えて考えることになるでしょう。
例えば、失禁は介護者にとってよく遭遇する認知症の人の「問題行動」です。さらにオムツをあてがうと認知症の人は一生懸命取り外そうとするかもしれません。この行動は、介護者からみると「問題行動」でしょうが、認知症の人からみると不愉快なオムツをあてがわれたことが「問題行動」かもしれません。
このように介護者と認知症の人のそれぞれの立場で「問題行動」の捉え方が異なり、またある介護者にとって「問題行動」は別に介護者にとってはそうでないこともあります。このため客観的な「問題行動」というものはなく、介護者と認知症の人の間でのことであるため、より客観的な概念として「認知症の行動および心理的症状(BPSD)」という用語が使われるようになっています。
- 妄想症
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認知症と区別すべき精神障害のひとつで、妄想のみで知的機能の低下はありません。妄想の多くは被害妄想で、「隣の人が自分が居ない時に家に入り、金を持って行く」、「嫁がいつの間にかご飯のうえに毒をまいている」など根拠の乏しい被害を訴えます。しかもその思い込みは通常の説明や説得では納得しません。
この妄想症は、女性高齢者に多い傾向を見受けます。しかも一人暮らしの女性です。妄想症の人の生活歴などをみると、もともと猜疑心を強い性格をもって周囲との関係もよくなく、猜疑心のためますますその関係が悪くなり、これが猜疑心を強めるといった悪循環のなかで妄想症がつくれるようです。こうした人は家族内でも人間関係に軋轢が多くなり、離婚、子供達の別居といった関係になり、結果的に一人暮らしになっていると考えます。さらに一人暮らしをすることで自己防衛的になり妄想症を強めるようです。また視力、聴力が低下した高齢者では妄想症が一層強くなります。
妄想症の人は、周囲が悪い、自分が被害者と思っているが、妄想のなかにあって孤立していることが不安が強く、できれば誰かへの依存したいと思っていることがあります。従って、妄想症の人に対しては、威圧的な説得は効果がないばかりか、逆効果です。明らかにありえないと思われる話や訴えにとにかく耳を傾け、話を聞きます。こうして人間関係をつくりながら、「私はそうは思いません」がと宴曲に否定してみるのもよいでしょう。こうした対応をしても周囲とのトラブルが絶えず、精神科病院へ入院せざるをえないこともあります。