ジオフェルンZ/ヤマイモ抽出物(ジオスゲニン)高含有.高齢化社会の新しい栄養機能食品

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人間関係

 認知症の状態や介護には人間関係が影響します。認知症の人と直接介護している人との人間関係が、認知症になる以前から好ましい関係にあれば認知症の人はその関係になかで生活を送り精神的にも安定しやすいが、人間関係が悪いと、介護者に依存的になったり拒否的になったりして精神的に不安定な状態に置かれやすい。この認知症の人と介護者との人間関係を理性的、情緒的、倫理的、法的、経済的、文化的、宗教的など分けてみることもできます。

日常生活能力

 歩く、食べる、排泄するなど日常生活上の能力のこと。ADL(Activities of Daily Life)と略することが多い。認知症の人は、認知障害によりこの日常生活能力が低下することが少なくありません。さらに身体疾患や障害が加わってこの能力が一層低下します。日常生活能力について広く認められ使用されている基準はありませんが、起立、移動、食事、排泄、洗顔、入浴、着替など項目別に段階付けしたいろいろな基準が使われています。簡単のものとして厚生労働省の「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)」判定基準」があり、自立のJから自力では寝返りもうてないC2までに分類されています。

障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

生活自立

ランク

何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する

1.交通機関等を利用して外出する
2.隣近所へなら外出する

準寝たきり

ランク

屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない

1.介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2.外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている

寝たきり

 

ランク

屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ

1.車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
2.介助により車いすに移乗する

ランク

1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する

1.自力で寝返りをうつ
2.自力では寝返りもうたない

(平成3年11月18日 )

 

日常生活自立度(認知症高齢者用)

厚生省は1993年に通達した認知症高齢者の日常生活の状態を判定する基準で5段階にわかれています。介護保険でも認知症の状態を判定する基本的な基準となっています。

ランク

判 断 基 準

何らかの痴呆を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。

日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。

Ⅱa

家庭外で上記Ⅱの状態がみられる。

Ⅱb

家庭内でも上記Ⅱの状態がみられる。

日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。

Ⅲa

日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。

Ⅲb

夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。

日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。

著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。

(平成5年10月26日) 

日常生活自立支援事業

1999年10月から「「地域福祉権利擁護事業」として、市町村で開始した制度で、認知症の人、知的障害者、精神障害者などが対象です。事業の内容は、相談と援助で、援助としては「福祉サービスの利用援助」「住宅改造、居住家屋の賃借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助」などです。実施主体は、都道府県社会福祉協議会及び指定都市社会福祉協議会ですが、窓口業務は市区町村社会福祉協議会等が実施しています。本人、家族、代理人などが相談、申請し、これに応じて相談、調査等を行い、支援計画を作成し、契約を結びます。これに基づき生活支援員が援助にあたります。援助は金銭管理にとどまらず福祉サービスなどの内容の確認も含まれます。しかし認知症の人との契約が必要であること、サービスを受ける場合に利用料がかかることなどから、また事業自体がよく知られてないことから利用者は限られているのが現状です。 2007年4月より「日常生活自立支援事業」に名称変更しました。
なお、2007年度の利用契約件数は8,580件で、このうち認知症高齢者は5,488件(64.0%)です。

日本認知症ケア学会

2000年6月の設立された認知症ケアに関する多専門職による学術団体で、認知症高齢者のケアに関する学際的な研究の推進、ケア技術の教育、社会啓発活動等を通じて、質の高いケアを実現し、認知症高齢者および介護者等の生活の質を高め、豊かな高齢社会の創造に資することを目的とし、学会、学術雑誌の発行のほか、研修会、認知症ケア専門士の認定などの活動を行っています。 会員数は3,480名(2006年10月現在)。

認知予備力

英語のcognitive reserveのことで、認知機能予備力ともいう。人が見かけ上持っている認知機能以上に潜在的にもっている認知機能のこと。この予備力を引き出すことで認知機能の低下を防ぎ、また向上させることができるとされる。

認知機能

人が外界から五感を通して得た情報を記憶、判断、統合などの機能でもって対称や状況を認め知る心理機能。

認知症

 認知症は高齢化する社会において大きく重い課題となる状態です。認知症は一つの病気ではなく、状態を示します。この項では認知症の診断基準、原因、頻度、治療、ケア等について述べます。
なお認知症という用語は、2004年厚生労働省が痴呆に代わる言葉として使うように通知して以降、急速に普及し定着しました。

認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)

 認知症に関わる介護家族を中心としたわが国唯一の全国的な民間団体。京都新聞社が主催の「ぼけ相談」に来られた介護家族を中心に結成を準備が進むなかで1980年に京都で発足した時はすでに全国団体となりました。現在は厚生労働大臣の認可を受けた社団法人であり、全国41都道府県に支部があり、会員数約9000人の団体(2006年2月現在)となっています。本部・支部での主な活動は次のとおりです。以下団体名は家族の会と略します。
①家族の集い
 家族の会の基本的な活動です。多くの支部では毎月あるいは3月に1回開催しています。家族の介護の苦しみ、悩みを語り合います。同じような状況に置かれた介護家族同志が理解し合い、支え合い、また情報交換する場です。集いでは医師など専門職から学ぶ場にもなります。               
②会報
 本部は月刊「ぽーれぽーれ」を発行しています。会報は、介護家族への精神的な支え、情報提供、また家族の会の理解を広める情報誌となっています。支部でも独自の支部だよりを発行し身近な情報を提供しています。
③電話相談
家族の会は発足当初から電話相談を行っています。現在は様々なところで認知症の介護相談は行われていますが、介護体験を踏まえた相談をしているのが家族の会の電話相談の特徴です。
④研究集会
家族の会は、認知症に関わる専門職、ボランティア、介護家族らが互いの壁を取り払って一堂に会して行う「ぼけの人と家族への援助を進める全国研究集会」を毎年開催しています。この研究集会で報告された事例がきっかけで「徘徊老人早期発見ネットワーク」が全国的に普及しました。
⑤調査
認知症にかかわるさまざまな調査を主に会員を対象に行っています。在宅の介護実態調査、若年期認知症、「不適切と思われるケア」、「拘束」、家族会活動、介護保険の利用実態などわが国で始めての調査もあります。
⑥国や自治体への要望
 こうした調査をもとにして厚生労働省への要望を重ねています。当初は「ねたきり老人なみを福祉」を、その後は認知症高齢者対策の拡充を、さらに若年期認知症への社会的サービスの充実を、2000年直前からは介護保険に関わる要望を行ってきました。また支部でも都道府県に対して身近な要望を行っています。 
⑦国際交流
家族の会と同じような認知症に関わる国レベルの海外の団体で組織されている国際アルツハイマー病協会に1982年に加盟し、各国との情報交換、毎年開催される国際会議に代表団を派遣しています。2004年10月には「国際アルツハイマー病協会第20回国際会議・京都・2004」を京都で開催し66の国と地域から4000人以上の参加者がありました。
⑧啓発活動  認知症の人と介護家族への理解を求めてさまざまな啓蒙的な講演会を開催しています。また国際アルツハイマー病協会の地球規模の活動の一環として「世界アルツハイマーデー」を毎年9月に全国一斉に街頭活動や講演会を行い、啓発を深めています。
⑨若年期認知症の人や初期認知症の人への援助
 若年期認知症の人と家族への援助は2000年頃から、また初期認知症の人への援助は2004年の国際会議以降徐々に広がっています。 
課題
 家族の会は発足以来、認知症に関しては先駆的に関わり、小さな地域的な集いから地球規模の国際交流まで幅広く、しかし常に認知症の人と介護家族中心とし、その視点で活動を展開してきました。しかし認知症の課題や問題は多様で複雑でかつ専門的な部分も少なくありません。アルツハイマー病の薬などを家族の会としてどう捉えたよいか、認知症の人の人権に関わる「拘束」についてもどのような視点で要望すればよいか、成年後見制度についてどう理解し対処すればよいかなど課題は山積しています。こうした課題にも家族の会がその視点を踏まえながら、発言し提言し活動することができるよう団体として一層の拡充が求められています。
家族の会についてのお問い合わせは次のとおりです。 〒602-8143京都市上京区堀川丸太町下る京都社会福祉会館  社団法人認知症の人と家族の会本部事務局 TEL:075-811-8195  FAX:075-811-8188 E-mail:office@alzheimer.or.jp ウェブサイト:www.alzheimer.or.jp  
付記:2006年度の総会で名称変更が承認された。

認知症の人のためのケアマネジメントセンター方式

認知症介護研究・研修センターで開発されたので簡単に「センター方式」とも言われ、認知症の人を評価しケアプランを立てるための方式。認知症の人の尊厳、利用者本位、安心、生の充実、自立支援、リハビリテーション、安全・健康・予防、包括支援などを視点として、「基本情報」「暮らしの情報」「心身の情報」「生活機能情報」「24時間アセスメントまとめ」の5つシートを使って行います。

認知症の診断基準

 わが国において広く認められた基準があるとは言えません。できるだけ同じ基準を持ちたいものです。ここではアメリカの精神医学会が1994年に提唱したDSM-Ⅳを紹介します。これは世界的に最も広く使われ、日本でも普及しつつある診断基準です。 
DSM-Ⅳの基準
 以下の5つの状態を全て満たす状態を認知症と言います。なおDSM-Ⅳでは最初からアルツハイマー型認知症、血管性認知症などの診断基準があり、認知症だけの診断基準は示されてはいませんが、それぞれに共通する基準を認知症として以下に示します。
○記憶障害
 記憶障害は認知症の基本的な状態です。記憶障害の程度や内容は問いません。一般的には新しいことが覚えにくくなります。
○ 失行・失認・失語・実行機能障害のうち一つを認める。
 ①失行:失行は、手足の運動麻痺や感覚麻痺がないにもかかわらす、目的にかなって手足の協調運動ができにく状態です。箸を逆さにもって食べようとしたり、コップでうまく水が飲 めなかったり、下着を上下反対にして着ようとしたりします。
 ②失認:失認は、対象物が何であるかの認識ができない状態をいいます。時計、花、鉛筆などが何であるかわからないか 、別の物と誤認します。その結果、時計を水につけたり、  花を食べようとしたり、鉛筆で食べようとしたりする。失認の対象が家族や介護者のこともあります。
 ③失語:言葉を忘れて自分から話しにくい場合と言葉の理解ができないくい場合、あるいはこの両者が同時にある場合とがあります。言葉、特に地名や人の名前などの固有名詞を  忘れ、「あれ」とか「これ」とか代名詞で表現しようとすることが多くなります。また自分からはすらすらと言葉が出るが相手の言葉が理解できないため会話が成り立ちにくい場合もあり ます。発音に必要な喉や舌などの動きにかかわる神経が障害されて言葉がでにくい状態をいう構音障害も失語に含めることもあります。
 ④実行機能障害:実行機能とは総合的な知的機能です。人がある状況に置かれた場合に、その状況を総合的に観察、判断し、適切な実行する機能をいいます。例えば、外出して道 に迷った場合に、周囲の状態を知り、これまでの記憶を整理し、そこからどのような方法で家に帰るかを判断し、それにもとづいて行動し目的を果たすのが実行機能の一例です。アル ツハイマー病の初期にこの障害が現れることが多い。
○社会生活に支障をきたす 上記の2つの状態だけであれば健康な高齢者や脳血管障害の人に認めることがありますが、これ だけで認知症とは言いません。これらの障害のために日常生活、家庭生活、集団生活、社会生活に支障が生じている状態でなければならない。例えば記憶障害があってガスの消し忘れが頻繁にあり、失語のために人との会話できにくく普通の日々の生活に難しくなるといった状態が社会生活に支障をきたした状態です。
○ 原因として脳や全身的な病気がある 認知症は器質的疾患の一つとされますが、脳の変化だけでなくエイズなど全身的な病気も原因として含めます。このため医師の診断を受けなければ認知症の判断ができないことになります。疾患を原因して確定することが困難な場合もあり、原因と思われ場合でもかまいません。
○ 意識障害はない 認知症は意識がはっきりしている状態です。呼んでもほとんど反応しない重度の意識障害の場合は判断が認知症の判断は不可能ですが、ばんやりしている軽度の意識障害の場合は認知症とは言いません。もっとも認知症の人が意識障害を伴っている場合があります。
 このDSM-Ⅳの基準について説明を追加します。
 第1は、DSM-Ⅳでは精神障害を小児と成人とに分けて分類しています。認知症は成人の精神障害に該当します。認知症は精神的に発達した後に発病する病気であることです。先天的または子供の頃から知的障害をもっている人が成人になっても認知症とは言いません。
 第2は、認知症は進行性とみられることがありますが、DSMの認知症の基準にはこれは含まれていません。認知症の中には進行性のもの(アルツハイマー病)もありますが、進まないものも(低酸素脳症)、良くなるもの(脳血管性認知症)、治るもの(慢性硬膜下血腫)があるのです。
第3は、認知症になるといずれは「人格が崩壊する」などと言われることがありますが、DSM-Ⅳにはこれについても何も触れていません。確かにアルツハイマー病やピック病の末期でのその人となりがなくなってしまうように状態になることがありますが、それは一部の認知症であり、多くの認知症の人は認知障害はあるが、感情豊かに生きています。
なお三宅は、認知症を以下のように簡単に定義しています。
 「一度獲得した知的機能の低下により自立した生活が困難な状態」
 すなわち、認知症は成人の病気であり、記憶障害など知的機能の低下があり、しかも通常の老化に伴う記憶障害ではなく、自立した生活が困難になるほどの知的機能の低下した状態です。例えば、買い物に行って勘定ができにくくなる、道に迷うことが多くなるといった状態で、誰かが常時見守っていないことには生活が営めなくなった状態です。
ほどの状態です。例えば、買い物に行って勘定ができにくくなる、道に迷うことが多くなるといった状態で、誰かが常時見守っていないことには生活が営めなくなった状態です。
「介護保険法」の第8条第16項では認知症を以下のとおり定義しています。
脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態」

頻度
 認知症の人がどれほどいるのかの調査は我が国では多く行われてきました。しかしその多くは地域での在宅の高齢者の認知症の頻度についてであって医療機関や介護施設での調査は少ない。
地域と施設での高齢者全体では、厚生労働省の推計によると2000年に7.1%、2005年に7.6%ですが、2035年には10.1%(即ち高齢者10人に1人)です。
 地域での年齢別(1987年)でみると、65-69、70-74、75-79、80-84、85-(才)でそれぞれの階層で1.2、2.7、4.9、11.7、19.9(%)です(医師会雑誌より)。
 原因疾患別にみると(1995年)、アルツハイマー病、 脳血管疾患、その他の認知症 不明がそれぞれ43.1、30.1、8.1、18.7で、1987年と比べアルツハイマー病が増加しています(東京都調査)。

認知症の原因
 認知症は、脳の神経細胞の減少や脳血管障害など脳の器質的疾患さらに脳機能の影響する全身疾患によることが基本ですが、認知症という状態は脳の変化だけで決まるわけではありません。認知症は、身体状態、精神状態、生活環境状態によっても左右されます。脳の器質的要因を1次要因、後者の3つの状態を2次要因と呼びます。認知症はこの1次要因と2次要因が合わさって決まります。
1次要因
①脳血管障害
 脳血管障害は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に3疾患です。高齢者では脳梗塞が多い。脳血管障害は症状は急に現れますが、重度の意識障害に陥りそのまま死に至ることもありますが、後遺症として片麻痺など運動障害を残すことが多い。初発から認知症を認めることは比較的稀で、脳血管障害の再発を繰り返すなかで認知症を認めることが多い。最初から認知症のみを認める脳血管障害もあります。また小さい脳梗塞を繰り返すなかでゆっくり認知症が現れることもあります。脳血管障害は、通常高血圧、糖尿病、高コレステロール血症など脳血管障害の危険因子を管理・治療することで脳血管障害の再発を予防することで進行を止めることも不可能ではありません。また予防も可能です。脳血管障害による認知症を、脳血管性認知症または血管性認知症とよびます。
②アルツハイマー病
 アルツハイマー病は、脳の神経細胞の働きが低下したり死滅する進行性退行性の脳疾患の一つです。初発症状は記憶障害で、何時とはなしに現れゆっくり進行します。記憶障害に判断の障害が加わり、認知機能が全般的あるいはまだら状に低下します。重症化すると神経症状が現れ歩行が困難となり、嚥下障害も現れ、感情活動も低下し無関心、無表情の状態になります。アルツハイマー病による認知症をアルツハイマー型認知症とよび、脳血管性認知症と合併していることもあり、これを混合型認知症とびます。
③その他
 上記の2疾患の他に認知症の原因となる多種の脳の器質的疾患があります。頻度は低いのですが治る認知症、良くなる認知症、防げる認知症があります。
○慢性硬膜下血腫(頭部打撲の後、頭蓋骨の内部にある硬膜の下に血腫が形成され意識障害、運動障害、認知障害などが生じる。早期に血腫を取り除けば認知症が治ることがある)
○頭部外傷(頭部を強く打つなどしたのち意識障害が生じ、その後回復してから認知症が現れることがある)
○正常脳圧水頭症(認知症、歩行障害、失禁を3症状とする脳脊髄液の循環障害による疾患で早期に脳室から腹腔までの皮下埋設型のカテーテルで循環障害を改善することで認知症が治癒することがある)
○脳腫瘍(良性でも腫瘍の部位によって認知症が現れる)
○低酸素脳症または無酸素脳症(窒息や一時的な心臓停止などにより脳の神経細胞が酸素欠乏になり慢性的に認知機能が障害される)
○ピック病(前頭葉型認知症あるいは前頭葉側頭葉認知症ともいう。生活や性格の変化が目立ち、その後認知症症状が現れる。若年期の典型的な認知症)
○レビー小体病(日内に変動する認知症、パーキンソン様症状、幻視を3症状とする。レビー小体を脳に広く認める)
○パーキンソン病(歩行障害などの神経症状が主な症状であるが、進行すると認知症が現れることがある)
○進行性核上麻痺(眼球の運動障害、歩行障害など神経症状に加え認知症が認める)
○大脳皮質基底核変性症(ぎこちない運動、左右差のある震戦を認め、進行すると認知症が現れる)
○クロイツフェルト・ヤコブ病(異常プリオンによる伝染性疾患で歩行障害などの神経障害と認知症が現れ、進行が早い)
○脳炎(ヘルペスウイルスなどによる脳炎の後遺症として認知症が出ることがある)
○エイズ(HIV感染症で末期に認知症になることがある)
○アルコール症(長期に大量の飲酒を続けているとアルコール性認知症になることがあり、早期に断酒すれば改善する)など
  これらの疾患のなかには進行性のもの(ピック病)もあり、固定的なもの(低酸素脳症)もあり、治癒できるもの(慢性硬膜下血腫)もあり、予防可能なもの(アルコール性認知症)もあります。
2次要因
①身体状態 
 認知症の人の身体状態は認知症の状態や症状に影響します。発熱、脱水、貧血、便秘、甲状腺機能低下、難聴、視力障害などがあると認知症は悪化しやすい。例えば、食事が十分に摂れなかったり、下痢が続いて脱水状態になっていると認知機能が低下して認知症が悪くなることがあります。こうした時、経口で水分を十分に摂るか、点滴で補液するだけで認知症が良くなることは稀ではありません。認知症の人は身体状態を自ら訴えることは少なく、周囲の人が気付くか、身体面の検査で初めて認められることもあります。認知症が悪くなった場合、必ず身体状態の把握は必要であり、原因に応じた治療や介護で改善することもあるのです。また聴覚や視覚の低下がある認知症の人は、情報が不正確になり認知症が見かけ上悪くなることがあります。どこまで聞こえているか、見えているかの判断をしながら場合によってゆっくりはっきり話すなどの対応が望まれます。
②精神状態 
 精神状態も認知症に影響します。緊張、不安、焦燥、うつ状態、混乱、動揺など好ましくない精神状態は認知症を悪化させやすい。例えば老人ホームへ短期入所して環境が急に変化して馴染めない認知症の人は緊張しやすいものです。緊張することがその人が持っている認知機能が一層低下し判断がますます不確かになり認知症が悪化したような状態になることがあります。認知症の精神状態をよりよい状態にするための工夫が必要です。安心するような話しかけ、説得ではなく納得、プライドに配慮した対応、親しみを覚える生活環境などです。
ところで性格は認知症の人の言動に影響します。勝ち気で自己中心的な認知症の人は、自分ひとりで行おうとするもののうまく出来にくくなり混乱します。しかし失敗しても自分の非を認めようとぜず家族など周囲の人を非難することさえあります。このように認知症は軽くても性格的な傾向のために認知症の人の介護が困難なことは少なくありません。これに対して性格的に温和な認知症の人は、介護者の話に耳を傾けその指示に従い介護はしやすいでしょう。
③生活環境状態
 認知症の人にとっての生活環境状態は人的環境と物的環境とに分けることができます。
人的環境とは、認知症の人を直接介護している人のことです。介護者が、認知症について正しく理解し、認知症の人のことをよく知り、介護の方法も適切であり、介護者が心身ともに健康で、よい人間関係のなかで介護していることは認知症の人によい影響を与えます。認知症がよくなることもあるでしょう。
 物的環境とは生活する場の居住環境のことです。認知症の人が馴染んだ自宅や和めるグループホームで生活することは認知症によい影響を与えます。他方、長く暮らした田舎の家から都会の高層マンションの一室での生活を強いられることで認知症を悪くすることは稀ではありません。また身体の病気の治療のため殺風景な病院の病室で点滴、酸素吸入、心電図モニターなどに取り囲まれた生活が強いられると認知症が悪化するになりやすい。
 なお「環境の変化は認知症の人によくない」と言われることがありますが、よい環境から悪い環境への変化が好ましくないのであって、認知症に無理解で悪い人間関係のなかでの在宅介護という悪い環境から、認知症に理解があり余裕をもって介護できる老人ホームというよい環境への変化は好ましいことは言うまでもないでしょう。一概に環境の変化が悪いわけではありません。

診断
 認知症の診断は、軽度の場合は本人から状態を聞きますが、同居している家族など身近な人からから本人の記憶の程度や生活の状態の経過および現在の状態を聞くことから始めます。これらの情報は診断上とても大切です。その後、本人の身体面の診察に加え、記憶障害の状態など精神状態の把握を行います。この際に三宅式テストを行うと認知症であるかないかとおおよその判断ができます。状況によっては長谷川式テストを行うこともありますが、初めからするのは避けた方がよいでしょう。さらに詳しい心理テストを試みるこもありますが、初回の診察の際、軽度の場合本人が自分が認知症でないか不安を抱いていたり、進んだ認知症の人では何故診察を受けているのか理解できないで緊張していることもあるので、心理テストは先にした方がよろしい。次に血液検査、尿検査、胸部単純レントゲン撮影、心電図および頭部CTの検査を行います。認知症の人にも負担のかからない検査を優先的に短時間に行います。よりMRIやPETなどより専門的な検査が必要であれば他の医療機関へ紹介します。
 こうした検査を通して、認知症の1次要因の鑑別、2次要因の関わりなどについて判断します。また認知症でない精神障害が疑われる時は精神科に紹介します。
 こうした診断は1回だけで終わり治療して治る場合(慢性硬膜下血腫の場合)もありますが、多くは1カ月など一定の期間を置いて再度診察しより的確な診断を行うことが望ましいと考えます。特に軽度の記憶障害の場合、老化によるものか、軽度認知障害か、初期アルツハイマー病かの判断は慎重でなければなりません。

認知症の人の心理状態
 認知症の人の心理状態を以下の4つに整理することができます。こうした心理状態を理解することで認知症の人の言動を理解し、本人にも家族にもよりよい生活や介護につながるでしょう。 
○記憶障害   
 記憶障害は、認知症の人の基本的な状態です。記憶障害のない認知症はありません。この記憶障害は、加齢に伴う健康な高齢者の記憶障害とは異なります。まず新しくて大切なことが覚えにくくなるのです。健康は高齢者では新しいことは覚えにくくても、大切なことは覚えることができるし、覚えにくいと紙に書くなどして他の方法で覚えようとします。これに対して認知症の人は、新しいこが覚えにくいことに加え、大切なことと大切でないことの判別がつきにくく大切なことまで忘れてしまいます。また認知症の人の記憶障害は、粗大なことを忘れるようになります。例えば、夕食をすませた後、健康な高齢者では何を食べたか食事の内容をすべて覚えているわけではありませんが、食べたこと自体を忘れることはありません。認知症の人はこの夕食を食べたという粗大なことさえも忘れてしまうようになります。
 こうした記憶障害のある認知症の人には、大切なことは紙に書いて渡したり壁に張って情報を提供しなければなりません。記憶障害があるので、さっき見たこと、聞いたこと、言ったこと、したこともすっかり忘れてしまっています。「さっき言ったでしょう」とか「同じこと何回聞くの」と言う事は認知症の人には避けたいものです。
○判断の障害
 記憶障害に伴い判断も障害されます。この判断の障害を時系列的判断、抽象的判断、総合的判断の三つの障害にわけることができます。
 ①時系列的判断の障害
 時系列的判断とは時間の流れのなかで判断することです。今朝は掃除したので昼は買い物に行き夜はテレビを見ようとか、朝食は終わったので次は昼食を食べることになっているといった判断ができにくくなります。食べているのが朝食なのか、昼食なのか、夕食なのか時間の流れのなかでの判断がつかないまま、目の前に食事が用意されているから食べるといた行動をとるようになります。またリハビリテーションで昨日まで起立訓練をしたから今日は平行棒での歩行訓練をするということができにくくなります。通常のリハビリテーションが有効ではありません。時系列的判断が障害されている認知症の人にはその時その時の対応と時間に関係なく判断できるようその時々の情報を提供しなければなりません。
 ②抽象的判断の障害
 抽象的判断とは、なぜ診療所に受診するのか、なぜ老人ホームにいるのか、介護における人間関係など抽象的な事項に関する判断です。認知症の人はこの抽象的判断が障害されます。道路の信号を見ても赤、黄、青といった色という具体的なことは判断できますが、その色の意味する抽象的なことが理解できにくくなります。従って一人暮らしが難しいために老人ホームに居るその理由が理解できず家に帰ろうとしたり信号が赤でも渡ってしまうことになります。また抽象的なことがわかりにくいので具体的な食べ物やお金への執着が強くなります。
 こうした判断の障害に対しては抽象的な事として説明して理解を求めるのではなく、具体的に判断できる情報を伝える必要があります。例えば病院では「00さん検査のため入院中です」と掲示したり、蛇口の閉め忘れが多いと「節水」と書いておくと効果的のこともあります。あるいは感情に働きかけて情緒的に安心できる環境づくりも大切です。
 ③総合的判断の障害
 総合的判断とは、状況を総合的に判断することであり、認知症の人にはこれが困難となる。例えば、尿意をもよおした時にどの程度我慢できるか、便所はどこか、どのくらいで歩いてゆけるかなど総合的に判断しながら便所に行き排泄し後始末をするという総合的判断をそれに相応しい行動を取ることが苦手になります。従って総合的判断を求めるような同時に多くの情報を伝えることは避け、情報を分解して簡単に提供するのがよい。トイレの道順を「便所はこちら」「便所はここ」と簡単明瞭に示し総合的判断が必要としない方法で失禁を少なくすることができることがあります。
○過去に生きる 
 人は新しく大切なことは覚え、同時に新しくて大切でないことは上手に忘れながら記憶を新たに蓄え改めながら日々生活しています。しかし認知症の人は、記憶が障害され新しいことが覚えられないだけでなく、古い記憶も遡って忘れてゆくことがありま。これはアルツハイマー病に比較的よく見られる記憶の障害のされ方です。新しい記憶から古い記憶に遡って順次に記憶から失われ、80才の高齢者が過去30年の記憶を失うことになります。そうするとこの人にとって過去30年は無いに等しく、30年前すなわち50才頃の過去に生きているような状態になるのです。このため朝になると「会社に行く」とか「畑仕事に行く」とか、夕方には「子供が帰ってくるから夕食の用意をする」などと言うことがあります。あるいは鏡に写った自分の姿を見ても生きているつもりの50才の過去の世界のなかの自分と鏡の現実の自分の姿が合わなく、他人と思い語りかけをする姿をみることがあります。
 こうした過去に生きている人にどうのように対応するのがよいかは一概には言えませんが、認知症の人が生きている過去の世界を受け入れることの方がその人にとってはよい場合が少なくありません。生きているつもりの世界を受け入れることで認知症の人が精神的に落ち着くことがあるからです。この考えから生まれたのが治療の一つが「回想法」です。
○感情,思い、プライド、性格は残る
 認知症はあくまでも知的機能の低下であって、人の精神活動の一部である感情は残っていることが多い。食べた物、食べたことは忘れても、食べている時においしいとか、おいしくないといった感覚や食べることの満足感といったものは認知症のない人と同じです。また介護家族から自分の気持ちを害するような言葉―「ぼけでだめ!」など-をかけられたり、自分に苦手のことを指図されると感情的に反発します。知的機能が低下しているために正確に自分の訴えを伝えることが難しくなっていることから感情的な反応が強く出やすく、時には暴力として訴えざるをえない場合もあります。この残存している感情に対しては十分に配慮し感情に働きかけることは認知症ケアでとても重要です。同じようなことですが、認知症の人でプライドが残っていることには十分に注意し言葉がけにも工夫が必要です。元長であれば「校長先生」と呼んであげた方がよいでしょう。
 認知症の人の性格については一定したことは言えなません。認知症になって性格が変わる人もいれば、変化しない人もいます。変化する場合とは、別の性格に変わる場合と性格がより強くなる場合があります。几帳面な性格が認知症になって些細なことにこだわらなくなったり、鷹揚な人が短気になることもあるのです。この性格が認知症の人の介護を困難にしたり、容易にしたりします。また認知症の人自身も自らの性格で混乱しやすくなることも少なくありません。

認知症の経過 
 経過は認知症の1次要因の原因疾患によって異なります。アルツハイマー病では進行性で、若年期に発病するほど進行が早い傾向にあります。脳血管障害による認知症は再発を繰り返して段階的に進行することもあれば、あまり進行しないし、よくなることもあります。高齢者にある多発性脳梗塞では段階的に進行することがあります。その他の認知症の原因によって、治るものもあれば、進行しないが同じ状態が続くものもあり、急速に進んでしまうものもあります。
 認知症の人の最期の状態も原因疾患によってさまざまであり、アルツハイマー病そのもので亡くなる場合、脳血管障害に肺炎を繰り返して亡くなる場合、認知症のは関係なくがんを併発して亡くなる場合などがあります。

認知症の治療
 認知症の治療は、1次要因の治療と2次要因の治療とがあります。1次要因についてはアルツハイマー病、脳血管障害、その他の原因疾患に対してそれぞれ異なります。また2次要因については身体状態、精神状態、生活環境状態を改善させる療法があります。
 薬物療法
 認知症の薬による治療は、アルツハイマー病など原因疾患に対する治療と、認知症の行動、心理症状に対する治療とがあります。
 ①アリセプト
 アルツハイマー病への薬物療法として神経伝達物質であるアセチールコリンの減少を補う薬アリセプトがあります。この薬は軽度から中等度のアルツハイマー病の一部に有効ですが効果は一時的でありアルツハイマー病を根本的に治癒させる薬ではありません。欧米ではこのほか3種の薬が使われていますが、わが国ではアリセプトのみです。
②「脳代謝賦活剤」「脳循環改善剤」
脳血管障害にともなう精神症状の改善に有効と広く使われた時期がありますが、効果の再評価で効果はほとんどないとされ、一部の薬が使われているのみです。これも認知症の改善に効果があるわけではありません。
 ③向精神薬
 認知症の人の不穏、不安、緊張、うつ状態、暴力などの精神症状や行動に対して向精神薬が使用されることがあります。このうち抗精神病薬については効果がるとする報告、効果がないという報告、脳血管障害の副作用のため使用を控えるのが望ましいとする報告などがあり、評価は一定しません。認知症の人の不安、うつ状態、不眠に対して目的を明確にして相応しい種類と量の薬を使うことは意味があると考えます。しかし、いわゆる「問題行動」に対して向精神薬が使用することは「薬物的拘束」に陥りやすいので注意が必要です。認知症の人の精神症状や行動については、ケアの方法の工夫と合わせて使うことが基本です。
④その他の薬物
脳血管性認知症には、脳血管障害の危険因子である高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、心房細動、脱水に対してそれぞれ必要な薬物療法を行い、コントロールすることが脳血管性認知症の維持、進行防止、時に改善につながります。
⑤外科療法
慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症への脳外科的治療があります。
⑥その他の非薬物療法
認知症への薬によらない治療は、科学的に効果が確認されたものはありませんが、経験的に有効とされるいくつかの療法があります。 
 回想法
認知症の人の生けている世界にそって記憶が比較的しっかりしている内容について話あったりします。残存した機能を十分に発揮し精神的安定をもたらし知的機能の改善を図ります。認知症の人の若い頃の写真、新聞、身の回りの物などを見たり読んだりしながら、それについてはなり合ったり、思い出を語ります。
音楽療法 
 音楽療法は、認知症の人がなじみのある音楽を聞いたり、歌ったりすることで精神的安定した状態にもってゆこうとする療法です。その音楽とは、昔の歌謡曲、文部省唱歌、童謡、軍歌、民謡、クラッシックなどで個々の認知症の人によって異なります。
見当識療法
 見当識とは時、所、人に関する判断能力をいいます。知的機能が低下した認知症の人は場所や日時についての見当識が低下しており、これが精神的に混乱の原因の一つとみなして見当識を強化することで精神的安定を図ろうとする療法です。軽度の認知症の人に試みてよい方法です。
バリデーション
 認知症の人の言動にはそれなりの背景と意味があり、どのように不可解に思えても、受け入れることを基本とするケアの考え方、方法です。認知症の人が「家に帰る」と言えば「そうですか、家にかえるのですか」というやり取りで、まずは認知症の人の言動を否定しないで受け入れてゆくことを第1歩とします。
その他
アロマテラピー、ガーデン療法、ドール療法、ペット療法、絵画療法などいろいろな試みがされています。一部有効と思われますが、広く認められた認知症の治療方法というレベルのものではないと捉えています。

認知症の介護の基本

 認知症の多くは治癒しないために、介護が重要となります。その介護の目標が何であるかは簡単に決められませんが、どのような認知症の状態であっても、また重度の認知症あっても認知症という状態にありながらその人が精神的に安定して生きることができるいような状態することが介護の基本的な目標と考えます。そのための基本的なことについて列記します。
○認知症の人を知る
 認知症の人は個々人によって症状や状態が異なります。まずはその人の認知症の状態を知ることが介護の第1歩です。認知症の程度すなわち認知機能の状態、1次要因がアルツハイマー病か脳血管障害か、あるいは他の疾患か、さらに身体状態、精神状態、生活環境状態の2次要因も知っておきたい。認知症の状態だけでなく、認知症という障害をもった人として知ることはもっと大切です。すなわち生活暦、職業暦、性格などについて知ること認知症の人を知ることです。
○残存能力に働きかける
認知症の人は好んでもの忘れし判断ができにくくなったわけではありません。病気でそうなってしまったのです。このような人に何ができ何ができないかを判断し、残っている能力すなわち残存能力に働きかけて生活を送ってもらいましょう。できないことは無理にさせない方がよい。出来るか出来ないかは試してみないとわからないことではあるが、出来ないことを無理にさせようとすることは認知症の人には負担となるばかりか、混乱したりうつ状態になりかねません。できないことはできないこととして受け入れ支えてゆくのがよいでしょう。
 例えば、失禁が始まると、その理由や背景を理解し排泄に関わる一連の行動のなかで何ができ、何ができないかを判断する。そのなかで便所の位置が和からにならば言葉で教えるのではなく、張り紙に書いて便所の位置を知らせ、できないことを補っていく。これでも失禁が頻回にあるようなら便所まで連れて行くといった方法をとり、できないことを判断しながら支えていきます。
○生きている世界を受け入れる
 特にアルツハイマー病の人のなかにはあたかも過去に生きているかのような判断し行動をすることがあります。この状態に対して現実の世界を認識させ現実の世界に生きるような働きかけを試みてもよいが、必ずしもうまくいかないだけでなく、認知症の人に混乱を招ききかねません。むしろ認知症の人の生きている世界を受け入れた方が、かえって落ち着くことが多いものです。このために認知症の人の言動が現実と乖離していても、まずはその世界を受けれるように話を聞くといった姿勢で接してみましょう。
 認知症の人が、成長し独立した息子や娘をあたかもまだ子供でいるかのように思っているなら、その世界を受けいれ認知症の人の話に合わせて会話を続けます。現実の世界を説得して押し付けるのではなく、婉曲に説明するのがよいでしょう。
 こうした受容的な対応は単に介護上の接し方にとどまらず、病院や施設での施設・設備にも配慮することです。例えばグループホームでは、畳の部屋、木の廊下、昔に使いなれた家具の配置などによって認知症の人が過去の世界に生きる支えとなり心の和みにつながります。
○感情や思いに配慮する
 認知症は知的機能が低下してはいるが、喜怒哀楽などの感情活動は残っています。知的機能が低下しているがために感情的に行動すること多くなります。感情的な判断も多くなります。このように認知症の人の感情や思いへの配慮は重要です。認知症の人がどのような気持ちでいるか、どのような思いや期待を持っているのか、性格はどうかを知りながら対応します。話の内容と同時に話し方が大切となります。ゆっくりしたテンポの発語、丁寧な言葉遣い、思いやりのある態度などに注意します。
 また在宅でも施設でも、感情への働きかけを意図した心地よい雰囲気作りも大切です。適度に生活の雑音がするが落ち着ける雰囲気、閉じ込められているといった拘束感のない和める雰囲気などを作り上げていくことは認知症の人の感情への働きかけとして考慮すべきでしょう。
○身体状態の観察し対応する
 認知症の人は自らの身体状態を的確に訴えることが少ない。腹痛があっても「腹が痛い」とは言わないことがあります。腹痛の場合も、なんとなく元気がない、あまり食べない、横になっていることが多いといった態度を取ることがあります。あるいは大腿骨頸部骨折でも自分から「足が痛い」とは言わないで、ベッドに横になる時間が長くなり、時には痛くても歩こうすることがあります。自分で姿勢を変える時に苦痛表情をする、ベッド上の体位の変換の仕方いつもと違う、便器に座わらせようとすると嫌がるといった態度をとるといったことから骨折を疑うことになります。
 介護者は認知症の人の身体的変化に早めに気づくかなければなりません。いつもと違う行動、表情に気づき、「どうですか」と質問するのではなく、「おなかが痛くありませんか」「足が痛くありませんか」のように「はい」や「いいえ」で答えられるような質問をして確かめるのがよい。病気や怪我を疑えば早期に医師の診察を受けるようにします。
 身体状態への対応として、認知症の1次要因の脳血管障害では危険因子である高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などについて定期的な検査と継続的な治療を行います。また2次要因としての身体状態への観察や対応も必要で、体温測定での熱の有無、舌の乾燥状態をみて脱水の有無などの観察、判断をします。さらに健康と思われる認知症の人の身体的な検査は定期に受けておきたい。認知症の人にとっても身体的病気の早期発見、早期治療は重要です。
○身の安全へ配慮する
 認知症の人は知的機能が低下しているために自らの身の安全を保つことが苦手になっています。さらに高齢者では視力や聴力の低下、脳梗塞による片麻痺や変形性膝関節症による運動障害のためますます身の安全が脅かされやすい。このために転倒、火傷、誤嚥、溺死の予防など身の安全も介護の重要な基本です。明るい廊下、階段の手すり、滑りにくい風呂の床、外出時の監視などです。
 ただし身の安全を重視するあまり認知症の人の行動の自由を奪ってはなりません。安全のためとして過度の身体的拘束は避けたい。安全の保障を行動の自由の保障は一見相反するようですが、バランスをとって身の安全を守りたいものです。
 さらに身の安全に関して、介護者による認知症の人への虐待をも避けることは言うまでもないでしょう。
○ 周囲の理解を得る
認知症の人の介護は休み間もなく続けられます。理解できない言動などに悩まされます。介護者は時に孤立することがあります。しかも特に認知症が軽いときは、たいしたことないと同居している家族、親族、近隣の人など周囲の人達の困難さへの理解を得ることが難しいことがあります。さまざまな機会に認知症と認知症の人を介護することへの理解を得るように勤めてみましょう。理解を得るだけでも介護の負担は軽くなるでしょう。さらに留守番など具体的な応援をしてくれるかもしれません。
○地域の社会的サービスを利用する
認知症の人の介護は家族だけですることが困難であり避けた方がよい。介護保険など地域で利用できるサービスを利用しながら家族でみることが望ましい。このため家族は、あらかじめ自分の住む地域にどのようなサービスがあるかを知っておきます。これについては在宅介護支援センターやケアマネージャーなどから聞くことができます。さらに老人ホームやデイケアなどを実際に見て、サービスの内容や利用方法について知っておくとよいでしょう。
しかしデイサービスやショートステイを利用することについての躊躇する家族がいます。家族内で同意が得られていなかったり、隣近所の目が気になったりすることがあるからです。しかし認知症の人の介護はでければオープンにして方が家族にとっても認知症の人にとっても好ましいものです。
○認知症の人の人権への配慮
 認知症の人は自らの人権を守る力がありません。介護している人が守ることになります。
人間らしい生活、身体拘束や虐待のない介護、財産の保護などです。介護者が加害者になるおそれがある場合、成年後見制度の利用を勧めたい。
○介護者自身を介護する 
 認知症の人の介護は日々困難であるだけでなく、見通しが立てにくいことが一層日々の介護を困難にしています。こうして介護家族は精神的にも身体的にも疲労が募ってきます。介護者自身の心身が健康でなければ介護は続けられません。疲労がたまり不眠が続くようであれば、介護者は休養を取るようにしましょう。同居している家族に代わってもらうか、親族に応援を頼むか、デイサービスやショートステイなど介護保険サービスを利用して休養をとりましょう。病気のときは通院や入院で治しましょう。

予防
 認知症の予防は認知症の原因疾患により異なります。アルツハイマー病など認知症に関する危険因子についての多くの調査研究の報告がなされており、予防の方法も明らかになりつつあります。こうしたなかで、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などが危険因子とされ、ビタミンCやE、葉酸、運動、少量の飲酒、趣味を持つことなどが保護因子とされています。

認知症ケアマッピング

認知症ケアマッピングは、英語のDementia Care Mapping (DCM)のことで、認知症の人のケアについて認知症の人の行動を観察し記録することによってケアの質を評価する方法です。1980年代にイギリスで開発されました。DCMは研修を受けた「マッパー」とよばれる専門職が認知症の人をおおよそ5分おきに6時間観察します。本人の行動を歩行や会話など25に分類された「行動カテゴリー」に基づき、状態を非常によい「+5」から非常に悪い「-5」の数値で現します。こうした客観的に数値化された状態の変化でもってケアに質を評価し,ケアの向上につなげようとするものです。

認知症ケア専門士

日本認知症ケア学会が認知症ケアの質の向上を目指して専門的な知識と経験と技術を有する認知症ケアの専門士制度で2005年から始めました。対象者は、3年以上の実務経験がある人で、学会の規定による試験を合格すると資格を得ることができます。

認知症サポーター

認知症の人と家族を地域で応援する人。厚生労働省は全国で100万人養成を目標としています。都道府県や市区町村などは認知症サポーター養成講座の講師(キャラバン・メイト)を認知症介護指導者研修の修了者などを対象として養成し、このキャラバン・メイトは全国キャラバン・メイト連絡協議会に登録され、認知症サポーター養成講座を開催します。この誰もが受けることができる講座は受けることで認知症サポーターになれます。認知症サポーターは、地域の指導者として認知症の人と家族のための地域づくりの担い手として期待され、目印としてオレンジのリングを腕につけます。

認知症高齢者認定看護師

日本看護協会は特定分野の看護知識や技術に優れた看護のできる認定看護師の制度を1997年から始めましたが、2006年からは認知症高齢者の分野でも設け、その認定看護師を認知症高齢者認定看護師といいます。

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