- 脳代謝賦活剤または脳代謝改善剤
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脳神経細胞の代謝を高め脳血管障害に伴う心身の症状を改善するものとして我が国で広く使用されていました。ホパテに始まるこの種の薬は、その効果が国際的に認められた物はなく、曖昧であり、認知症に効果があるとは書かれていないにもかかわらず、診療上脳血管性認知症に広く使われていました。当時は他に効果にある薬がないことや医療保険上処方すれば収入につながり、しかも副作用も少ないなどの背景から、適応が拡大解釈され汎用、乱用された経過があります。これに対してその薬剤費が無視できないほど高騰したことなどかあら、厚生省は「薬理学的に有効であるが、医療的な有用性は認められない」との理由で保険診療の薬剤からほとんど削除され、一部の薬が残っているのが現状です。
- 脳腫瘍
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脳腫瘍は良性のものでも発生する部位によっては運動障害、視力障害、認知症を生じることがあります。早期発見し早期に脳外科的治療で認知症がなくなることもあります。悪性の脳腫瘍-例えば肺癌の脳転移-などでは上記の症状が進行性に悪化し最期は意識障害が生じる。
- 脳血管性認知症
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脳血管性認知症は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の脳血管障害による認知症。DSM-Ⅳ(DSM-Ⅳでは脳血管性認知症とはいわず血管性認知症という)では認知症の状態にくわえ「局在性神経徴候や症状または臨床検査の証拠が認知症に病因的関連を有すると判断される脳血管性疾患を示す」を条件としています。
我が国では脳血管性認知症はアルツハイマー型認知症が多いとされてきましたが、最近の調査ではアルツハイマー病より頻度が少なくなっています。
脳血管性認知症の診断は容易なようで注意しなければならないことがあります。脳梗塞がそれによる片麻痺がある、さらに認知症があれば脳血管性認知症と診断してよいわけではありません。認知症の原因は脳梗塞ではなくアルツハイマー病かもしれないからです。このため脳血管障害の経過と認知症の経過とから判断しなければなりません。もっとも後期高齢者に多い多発性脳梗塞では発症時期のはっきりせず経過も緩慢なこともあり、アルツハイマー病との判別が難しいことがあります。
脳血管性認知症は、脳梗塞などで発症するわけですが当初から認知症を発症することは少なく再発を繰り返すなかで認知症が次第に現れることが多い。
したがって脳血管性認知症は、その危険因子―高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、心房細動など―をよく管理すれば予防も進行防止も可能な認知症です。また少量のアスピリンを服用することで脳血管性認知症の予防、進行防止が可能とする説もあります。
- 脳血管障害
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脳血管障害は脳卒中とも言われますが脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の総称です。
高齢者では脳梗塞が最も多く、また比較的若い人はくも膜下出血が多い。脳出血は減少傾向です。脳血管障害は発病してそのまま死に至ることもあれば、ほとんど後遺症がない場合もあります。しかし死にいたることが稀で、後遺症を残すことが多く、片方の上下肢の運動麻痺、構音障害、嚥下障害、失語症、それに認知症の状態をもちながら生活を送っている人が多いのが現状です。
また脳梗塞、脳出血では再発が少なくなく、再発を繰り返すなかで認知症が現れることがあります。脳血管障害による認知症を脳血管性認知症あるいは単に血管性認知症と呼びます。