- 在宅介護
-
社団法人呆け老人をかかえる家族の会の1999年の調査によると認知症の人のおおよそ3分の2分は在宅介護を受けながら生活しています。同調査でも明らかにした認知症の人の家族による在宅介護は多くの困難を伴います。例えば、自分の時間がもてない、24時間の介護で心身ともに疲れる、特定の人に介護が強いられ交代してくれる人がいない、介護の苦労を理解してくれる人が少ない、同居の家族も含め周囲の人の理解が乏しい、家を開けられない、いつもで在宅介護が続くのか不安であえるなどです。
在宅介護は認知症の人にとって最も好ましいと言われることがありますが、在宅介護の条件が整ってのことであり、以下の条件が考えられます。
①認知症の状態
認知症が軽度でも困難と思う介護家族もいれば、重度でも在宅介護を適切に続けている介護家族もいます。但し、幻覚妄想、不眠不穏あるいは暴力行為などがあると在宅介護は困難となるでしょう。
②認知症の人の身体状態
認知症の人が肺炎、心筋梗塞、骨折などの身体疾患にかかると在宅介護は続けることができません。軽症の場合は往診、訪問看護があれば在宅介護は続けられるかもしれません。またアルツハイマー病で末期がんの状態でも在宅介護を続けることは不可能ではありません。
③介護家族の理解と人間関係
介護家族が認知症を正しく理解することは在宅介護の基本です。誤解に基づく介護は認知症の人にも好ましくなく家族も疲れます。さらに介護家族と認知症の人との人間関係も良好な方がよいことは言うまでもありません。好ましくない関係のなかで在宅介護を続けることは望ましいことではないでしょう。虐待につながる恐れもあります。
④介護家族の健康状態
在宅介護は見通しが立てにくい、日々の介護の困難さに加え、将来への不安などから介護家族は心身ともに疲れ、不健康な状態あるいは神経症や心身症に陥ることは稀ではありません。不健康な状態、病気のなかでは適切な在宅介護は難しいでしょう。あるいは家族の病気のために在宅介護を中断せざるをえないこともあります。
⑤住居環境と経済状態
狭いアパートで認知症の人を介護することは困難であり好ましくないでしょう。介護家族の経済状態によっては仕事を辞めるわけにもいかず認知症の人を昼間一人にしておくこともあります。一応在宅介護ですが危険でもあり好ましくもありません。
⑦周囲の理解と協力
家族内での認知症の人への理解を共有し、近隣の人たちにも理解され、できればなんらかの協力を得ることは、直接介護している家族にとって理解者をいることによる介護の余裕に加え、「徘徊」などのときの応援も頼みやすいでしょう。
⑧地域で利用できる社会的サービス
介護家族だけで在宅介護を続けることは容易ではなく避けるべきでしょう。介護保険導入後、認知症の人と家族への社会的サービスを量的に増え利用しやすくなりました。ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイなどを利用しながら在宅介護を続けることが好ましい。
- 在宅介護支援センター
-
在宅介護支援センターは市区町村にあっては、基幹型と地域型とがあります。基幹型在宅支援センターは、高齢者や家族の相談を総合的に受け、必要に応じてサービスの調整や情報提供を行い、ケアマネージャーや地域型在宅介護支援センターの支援を行います。地域型在宅介護センターは、地域に密着した高齢者の支援を行い、高齢者や家族から来所・電話・訪問などで相談を受け、必要に応じてサービスの利用手続きなどを行います。認知症の人とその家族も利用できます。
- 在宅医療
-
在宅医療は、患者が在宅で生活するなかで
受ける 医療のこと。広義には、糖尿病患者のインスリンの自己注射、腎不全患者の自己腹膜環流、慢性閉塞性肺疾患患者の在宅酸素療法など在宅で生活しながら受ける医療および外来診療も含めるが、狭義には、心身の障害のため通院が困難で在宅での生活を強いられいる患者へ提供する医療をいう。この在宅医療は医師の往診や訪問診療、看護師の訪問看護、理学療法士らの在宅リハビリテーション、薬剤師による在宅服薬指導、栄養士による在宅栄養指導などであがあります。できるだけ住み慣れた家や地域で患者が生活できるために在宅医療が欠かせないと重視されていますが、同時に医療費抑制の狙いもあります。
認知症の人は比較的早期や軽度のときでも通院が困難であることが多く、また重症になると身体障害が現れるため在宅医療は必要性が高い、同時に医師や看護師は在宅で生活を見ながら、医療を進め、相談にのり、助言ができる利点があります。また終末期医療も在宅医療として行うことも増えつつあります。