- 不潔な行為
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認知症の人が汚れたままの下着をしまったり、便でトイレや寝具を汚したりといった不潔な行為があり、介護に困難は容易ではありません。こうした不潔な行為は、認知症の人自身も不潔であることがわかっていても、どうしてよいか総合的な判断が障害されているために適切な処理ができないことから起こると思われます。例えば、失禁して下着を汚した場合、それを洗濯物として出せばよいのかわからない、恥ずかしいといった気持ちは残っているので早く押し入れにしまってしまうことになります。また洋式便器では排泄したものがいつまでも便器にとどまっているのは認知症の人には不可解でそれを処理したくなるのですがその方法が間違ってしまい結果的に便器や周囲を汚してしまいます。これも総合的な判断が障害されてはいるが感情は残っているという背景にあると思われます。
あるいは自分の大便を紙に包んで持っていることもありますが、これは何が食べれる物と錯覚しているか、失認のためのよる行為と思われます。
こうした不潔な行為はそれなりに理由や背景があるので単に認知症ているから不潔行為をする短絡敵に考えない方がよいし理由を知ることから介護の工夫が生まれてくるはずです。
汚れた下着は早めに変えるのがよいのですが、「汚れたから変えましょう」というのでは認知症の人のプライドを傷つけるかもしれません。「洗った下着があります。履き代えたら気持ちがよいと思いますが」とさりげなく変えてしまうのがよいでしょう。便器を汚すのであれば自動的に洗浄してする機器を便所に設置するのも一つの方法です。不潔行為のため「つなぎの服」を使用せざるを得ないかもしれません。もっとも介護保険では身体拘束に該当するので禁止されています。
- 不眠症
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健康な高齢者に不眠症は少なくありません。不眠症は、寝つきが悪い、すぐ目を醒める、眠りが浅い、熟睡感がないというタイプに分けることができます。
しかし認知症の人の不眠症はこれらのタイプとは異なることが多く、不眠に加え不安、不穏が伴いやすく、夜起きて、昼間は寝るといった昼夜逆転したようになったり、2,3日間一睡もしないということもあります。
健康な人の不眠の場合は夜間目覚めても記憶をたよりに、あるいは周囲を見回し、時計を見て、今どこにいるか、何時か、これらどうしたらよいかの総合的な判断ができ、再び安心して睡眠につくことができます。しかし認知症の人は、就寝前の記憶が失われ、薄暗い部屋のなかで自分の居場所を確かめることが難しく、また時計をみても昼か夜か時刻がわかりにくくなっているようです。このように総合的な判断、時系列的な判断が障害されているなかでは、これから自分がどうなるのか、どうしたらよいかの判断が曖昧となり、不安や緊張になりやすく、ますます不眠や不穏の状態になるという悪循環に陥ります。
こうした認知症の人の不眠症を防ぐには、睡眠剤を服用すればよいというものではありません。まず昼間は身体を動かし、就寝前に身体を疲れさせておくと眠りやくなるでしょう。デイサービスに行った日は夜間よく眠るということはよく聞きます。また夜間に目覚めてもどこに居るかわかるように、部屋は真っ暗にせず薄暗くしておき「ここはOOさんの家です」と書いた紙を目のつくところに貼っておくとか、使い慣れた家具を置いて自分の部屋だということを確認し安心してもらうことも試してみましょう。こうしても不眠、不穏が続く場合に限り、抗精神病薬を少量服用しれもらいます。薬だけで不眠をなくそうとしてもうまくいかないばかりか、副作用で転倒することがあるので注意したい。
- 不適切なケア
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不適切なケアとは何か、その範囲などについては広く認められた定義はなく、虐待や身体拘束を含む広義の問題とすべきケアと考えられます。何が不適切かは主観的な要素も含まれるでしょ。社団法人呆け老人をかかえる家族の会が1997年に行った調査では介護家族が認知症の人の各種のサービスを利用するなかで過去5年の間で約64%の人が「不適切と思われケア」を経験していることがわかりました。この調査でも不適切なケアについては家族の判断にまかせました。
不適切なケアは虐待や身体拘束と重複する部分もありますが、精神面、身体面、施設設備など居住環境面、経済面、法的な面などケアにかかわる幅広く捉えたケアを捉えるのがよいでしょう。精神面での不適切なケアとは軽蔑した呼称、介護者の暴言や無視などであり、身体面では、ベッドや車椅子へ拘束、回数の少ない排泄介助、少ないオムツ交換、痛みなど身体的な訴えへの不適切な処置、受診の遅れなどであり、居住面ではプライバシーのない大部屋、居室でのポータブルトイレ、騒音などであり、経済面では本人の望まない買い物、所得に相応しいサービスを受けさせないこと、財産管理の不備などであり、法的な面では認知症の人の人権侵害やその放置などと考えます。
- 副次症状
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認知症の人の記憶障害、判断障害など知的機能の障害を中核症状というのに対して、不穏、徘徊、不潔な行為、うつ状態などを副次症状と言います。