- せん妄
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認知症と区別しなけばならない精神障害の一つ。せん妄とは、意識障害があり、幻覚や妄想に伴う不穏な状態をいいます。ぼんやりしている程度の意識障害の場合は認知症と見間違うことがあるがあります。ただし認知症の人がせん妄になるこもあります。
高齢者では、発熱、肺炎、手術後に生じやすい。したがって治療は、せん妄の原因疾患を治療することですが、一時的に抗精神病薬を使うと効果的なことがあります。
- 前頭葉型認知症・前頭葉側頭葉型認知症
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前頭型認知症あるいは前頭側頭型認知症(英語でFront Temporal Dementia 略称FTD)ともあり、代表的な認知症としてピック病があります。このほか、前頭側頭型変性症ともいうことがあります。これは失語症が主な症状で認知症を呈さない疾患もあるからです。
- 性格
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性格の定義は多様ですが、三宅は「状況における一定の心理的反応様式」と簡単に定義します。性格は,生来の性格に加え人生のなかで形づくられると考えます。性格は変化しうるもので、また性格は状況の変化でその現れ方は異なります。
性格は認知症の人の言動に影響します。「几帳面」と言われる性格の人は物事をきちんとしなければ気が済まないのだが知的機能た低下しているためにそれが出来にくく混乱し情けなく思い、ますます混乱することが起こることがあります。他方、「ずぼらな」と言われる性格であると細かいことにあまり拘らないので知的機能が低下していても精神的な混乱は少なく、介護しやすいかもしれません。認知症の人の言動の背景に性格があることも理解しておくよい。なお性格が認知症の危険因子か否かについては、「悲観的な性格」の人は認知症になりやすいという研究報告があります。
- 性格障害
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認知症と区別しなければならない精神状態または精神疾患です。
三宅は、「生活に障害をきたすような性格」と定義し、人格障害と同義語とみています。「かたくなに検査や治療を拒む人」「依存的過ぎてリハビリテーションが進まない人」などが性格障害と考えます。
性格障害は人格障害は同じ意味で使われることがありますが、人格はその人となりの根幹でもあり、人格障害は適切な用語とは考えません。また性格障害は精神疾患ではなく、別の精神状態との見解もあります。また治療の対象になるのかについても必ずしも意見が一致してはいません。また精神疾患と同様に性格障害も時代や社会的背景によってとらえ方が変化するものです。
しかし高齢者の場合でも、性格的な問題から家庭生活,集団生活,社会生活上の問題が起きて、その理解と対応を求められることは少なくありません。例えば「頑固な老人」をみた場合、性格障害として片付けるのはなく,何故頑固ならざるを得ないかを考えておきたいものです。頑固とは,言い換えると,変化を好まないこと,自分中心に物事が動いて欲しいことでしょう。老いのなかで高齢者はいわゆる「適応性の低下」のため自分や周囲の自分にとって不利な変化に適応しにくくなる。そのため頑固であることは老人の自己防衛の現れでもあると考えられます。こうした理解に基づいて「頑固な老人」に対応すべきでしょう。
従って,性格障害を治すことの意味についても考えなければならない.性格自体に「他人」が介入して変えさせることは難しい。性格障害があっても生活上の混乱が少なければよいと考えることもできます。性格を変えようとするのではなく、生活を変えたり高齢者の置かれている状況を変えることで性格の現れ方を変えることで、生活上の問題を少なくすればよいと考えます。例えば,在宅で「頑固な老人」は家庭内でトラブルを頻繁に起こしているが,デイサービスセンターや老人ホームでは「物わかりのいい老人」になることは稀ではありません。できるだけそうした機会を多くするとか,長男と嫁との生活では混乱が絶えないが,長女とのはうまくいくという例もあります。
- 性的行動
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状態
男性の認知症高齢者が長男の妻の臀部をさわったり抱きついたり、風呂場を覗いたり、人前で性器を露出したり、同じ高齢の妻に性的交渉を求めることがあります。女性の認知症高齢者ではこうした行動はなく、下着をはかないで家のなかを歩くといったそれまで見られていた「性的恥じらい」が少なくなる行為をみることがあります。
背景
高齢者は一般に性的欲求が減退しますが、男性でも女性でもなくなるわけではありません。認知症のない高齢者であれば、その表現方法、欲求の仕方、処理については理性的にコントロールできますが、認知機能が低下している認知症高齢者ではそれが難しくなり、周囲の状況、人間関係への配慮が乏しい性的欲求の向くまま直接的な行動に出やすくなるようです。しかし認知症高齢者といえども単に性欲を満足させるというだけでなく、性的行動を通して人としての接触を求めているという側面もあります。また特に女性の認知症高齢者では「性的恥じらい」も残っていることも忘れないでおきたい。
対応
性欲は人間が生きている証のひとつです。高齢者の性的欲求は人間的なものであり否定的にとらえないでおきたいものです。認知症高齢者も同様です。とはいえ、特に男性の認知症の人の性的行動に女性介護者はとても不愉快に思い、拒否的になることでしょう。しかし性的行動が人との接触を求めていることを理解しながら対応に工夫してみましょう。女性の臀部をさわろうとする認知症高齢者の手を軽くしりぞけながら「また後で」と感情を害さないように配慮する。性的交渉を求められることは女性高齢者には不快で拒みたくなるでしょうが、軽く身体を抱いてあげたり、性器を触ってあげることで性的欲求を満足させることができるかもしれません。また注意しておきたことは女性の入浴の際に、男性介護者は「性的はじらい」に十分な配慮した介助を忘れないでおきたいものです。
- 成年後見制度
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成人になると本人の自己決定権が法的に保護されていますが判断能力が低下した成人に対してその人に代わって財産等を保護しようとする制度です。従来の禁治産、禁治産制度が必ずしも本人のために利用されていない制度であり、知的障害者、精神障害者、認知症の人などの残存能力と自己決定権を尊重しようとして2000年4月から新しい民法に基づく制度としてスターとしました。
新しい成年後見制度では、判断能力など知的障害に応じて、補助、保佐、後見の3つに分類し後見しよます。おおよそ保佐は以前の準禁治産、後見は禁治産に該当するが、補助はこれより軽度の知的機能の障害の人に該当します。本人あるいは家族などが家庭裁判所に申請し裁判所の指示に基づきそれぞれの補助人、保佐人、後見人をつけ本人の生活と財産と権利を保護します。これらは法定後見制度であり、判断能力がしっかりしている時期に後見人を決めおく任意後見制度も同時に導入されました。これまでは家族や親族が優先的になっていた後見人は家庭裁判所が決める弁護士、司法書士、社会福祉士など相応しい人が指定されることがあります。なお後見人を決めるに際しては、時間と費用がかかり必ずしも使いやすい制度とは言えません。また医療や介護にかかわる事項については後見人の権限ではないとの見解が一般的です。
- 正常脳圧水頭症
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治る認知症のひとつで、認知症と歩行障害と失禁が3大症状です。人の脳脊髄の周囲には脳脊髄液があり、この液はゆっくり循環しています。しかし脳腫瘍などでこの流れが阻まれると脳内の液の圧が高まり頭痛や吐き気を呈することがあります。これに対して脳手術のあと、あるいは原因不明に脳脊髄液の流れがゆっくり阻害されて脳内の液の圧は高くならないが次第に脳室に液がたまり脳を圧迫することがあります。こうした状態を正常脳圧水頭症といます。この場合、早期に発見して脳脊髄液の流れを正常に戻すことで認知症が治ることがあります。脳外科手術は脳室または腰の脊髄腔から腹空内へ細いチューブを設置するもので負担の少ない手術です。但し発見が遅いと治療効果が期待できないこともあります。
- 生前遺言
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Living Willの訳。生前の意思表示ともよばれます。通常の遺言は本人の後に読まれるものですが、生前に判断力などがしっかしりている時期に、死亡前に本人の判断力が低下したり意識が低下した時の以降の生活についての意思を表示したものです。特に交通事故や脳血管障害などで意識がなくなった状態の時、どうのような治療を進めるかなどの意思を確認することができます。成年後見制度が導入されてからは、任意後見人を選び、生前遺言として意思を伝える制度が出来ています。制度としては認められていませんが、日本尊厳死協会が会員を対象として延命治療の拒否など尊厳死にかかわる生前遺言にかわるものとして証明書を発行しています。
- 精神障害者保健福祉手帳
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統合失調症などにより社会生活に支障をきたした精神障害者に支給される手帳であり、認知症の人も対象です。しかし身体障害者手帳と異なり、納税控除など特典は限られています。手帳の発行等は保健所が行っています。